15歳9ヶ月、史上最年少の藤井7段がインタビューの返答で使って初めて知った言葉、それが「僥倖」である。その4倍以上生きている64年間、私の出くわさなかった語彙力を持っている(笑)。だから、「僥倖」という言葉を聞くたびに彼をイメージしてしまう。昨年から使われはじめていたから流行語にはならないだろうが、思いもかけない幸運のことをいう。一般人なら、そんな難しい言葉を使わなくても、普通に「幸運」と言えば良いのになと思うが、彼やこの人が言うならサマになる。
曽野綾子氏の「老いの僥倖」という本である。数行のタイトルに小説やコラム記事からの抜粋の短い解説であり、老いということをポジティブに考えられる良書と思う。最終章の「老いの試練は神からの贈り物」には頭の隅に置いておきたいことが多く書かれていた。
- 高齢者は機嫌よく暮らす義務がある
- 自分以外のことにどれだけ心を使えるか
- 不運の中で他人を思いやる人たち
- 晩年はその人の美徳をもっともよく表す
- 贅沢を自ら放棄する美学
- 他者に感謝し続けられる病人でありたい
- 終わりがあるのは救いである
- 荷を下せばさわやかな風が優しく慰めてくれる
- 死後の再会を楽しみに生きる
私が曽野さんから学んだのは、この本にもあるような老いの品格だ(そのタイトルの本もある)。今からで間に合うかどうかわからないが、あの人は損得だけの人だったねといわれるのでなく品格を持った人だったといわれるよう僥倖な人生をと願うのである。